空家の所有者は10年前に他界。そこに住み続けている長男。転勤になったので売りたいなあ。このままで売れる?~増え続ける空家の売却で気をつけること
アミアカルヴァ行政書士法人 代表行政書士 竹原庸起子です。
近畿地方の山村に住んでいる30代の男性Aさんからの、「もう住まなくなる家を売ってほしい」旨の相談。不動産の名義がわかり、このままでは買い手が見つかっても売買の登記手続きができません。不動産の「相続登記」をしなければなりませんが、まずは相続人がわかり、アミアカルヴァ行政書士法人からAさんへ、次にすべきこととして「遺産分割協議」のことをお伝えしました。(前回までのコラムをご覧ください)
このケースではA,B,Eが「遺産分割協議」をおこない、「遺産分割協議書」という書類にAのものとすることを記載できなければなりません。協議書にはA,B,Eの実印が押されていて、印鑑証明書が添付されている必要があります。Aさんにこのお話をしましたところ、「遺産分割協議なんてできるかどうかわからないですよ。でもしかたないですね」とのことでした。
この空き家をだれの名義にしたいのかたずねますと、Aさんは空家の土地建物を自身のみの名義に相続登記したいとのこと。そして売却したいとのことです。アミアカルヴァ行政書士法人では、その内容の遺産分割協議書を作成すべく、Bさん、Eさんの現在の健康状態などをAさんにお聞きしました。
すると、Aさんからはこんな返事が。
「Eさんは、自分にとっては伯母にあたるが、もう30年も会っていません。祖父が亡くなった10年前に、葬儀などのことを知らせようと思って連絡とろうとしたけれど、どこにいるのか生きているかどうかもわからなかったから、祖父が死んだことは伝えてもいないんですよ。風の便りで、Eさんは病気で寝たきりだとか?本当かどうか調べられないし、しらべるのも面倒だから。Bさんは仲のいい弟だから、この家を僕の名義にすることにはすぐに賛成してくれると思うし、弟から実印預かって僕が押して代わりに署名しておきますわ。」
アミアカルヴァ行政書士法人の相談員がこの話を聞いて、Aさんにしっかりと理解してもらうべく、次の2点の話を伝えました。
まず1点目は、Eさんの現時点での住所、生死、そして判断能力があるのかどうかを確認しなければならないことです。判断能力が低下している人は、「遺産分割協議」ができません。判断能力の低下度合いによって、協議するには「法定後見人」等を選任して、その人が代理人として協議に参加しなければなりません。※裁判所での手続きが必要です。
そして2点目はBさんのことです。いくら兄弟の仲がいいとしても、実印を兄であるAさんが預かって代理で署名押印することはできませんし、そのような過程でできあがった遺産分割協議書の有効性が問われます。
するとAさんは、Eさんの現時点の住所を親戚のつながりから確認してみることと、Bさん本人に遺産分割協議書への実印押印をしてもらうと、納得くださいました。
Eさんの住所地を調べてからアミアカルヴァ行政書士法人へ連絡するということですので、アミアカルヴァ行政書士法人の相談員は遺産分割協議書案を作成してからその連絡を待つことになりました。
この続きは次回へ続きます。お楽しみに。